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2006年8月15日 (火曜日)

終劇近づく

 ジャッキーチェーンなどの香港映画を見ているとエンドクレジットの後に漢字で「終劇」と大きく表示される。つまり「THE END」の意味である。私は今日の小泉首相の靖国参拝を見ていて、取り上げ方や周囲の反応を見ているといよいよ「終劇」が近づいている事を、役者と観客の態度が変わってきた事から感じさせられた。

 テレビによる政治家の動向が伝えられ、その一言一句をマスコミが煽られ、国民が巻き込まれる。いわゆる劇場型政治のスタイルである「小泉劇場」と呼ばれた現政権。観客(国民)に真正面に向かい自分の言葉で問題を投げかけ、何度も繰り返す。そして一定の方向が定まるとまた別の言葉で関心を別の方向に向かわせる。さらにステージ上で敵役(抵抗勢力)を名指しで批判をする。本当に彼のスタイルは演劇タイプだと思わされる。

 しかし彼のステージも主要な題目は終えてしまった。「道路公団民営化」「年金改革」「特殊法人改革」「郵政民営化」彼なりにこなしたつもりだろうが、結果は散々である。このほころびは幕が下りてから多くの人が彼を評価する時に、「あの改革は何だったのか」と思い出すのではないかと私は思う。

 人の心は移ろいやすいもので事前に予告されたイベントを終了してまうと、観客は次のステージに関心が移りがちになる。これはどうしても仕方ないことである。彼は次の総裁選には出馬しない意向を早々に打ち出したし、後継者の指名についても特にコメントしていないためなおさらだ。でもステージに立つ側から見て観客の関心がこちらに向かないことほどいやなことはない。地道に少ない観客から自分のスタイルを訴えかけ、頂点達した人であるなら謙虚に観客の関心が薄れていることを捉えるかもしれない。しかし、いきなり注目を浴びていい気になっている人ほど、関心が薄れてしまった時にでる行動は、より関心を引こうとする動きになりがちである。小泉首相の場合、アメリカ訪問でプレスリーになりきったり、あるいは外交でモンゴルなどを訪れたりし、注目を集めるような行動を行った。しかし大衆の関心はもう小泉にはない。ポスト小泉レースに注目があつまり、最近では安倍内閣の人選や、ポスト安倍の動きさえある。こうなっては首相の動向は搔き消されたも同然である。

 今回彼が注目を浴びようとして行ったのか、あるいは後任に注目が浴びているのだから行ってもいいだろうと判断したのか知らないが、常々コメントしていたが終戦記念日の今日が適切な日であると判断したから、参拝したのだろう。彼は「A級戦犯に対して祈ったのではなく、全体に対して祈った」と今回も説明にも、意味も嚙み合っていない言及に終始した。中国・韓国・東南アジアからの非難も当然あった。しかし周辺国の反応も、マスコミの反応も以前と比べてトーンが下がってしまった。これまでの参拝後の反応から見れば、靖国神社をどうするかといった内容は取り上げられるようになったが、首相の行為に対する言及は減ったように思う。

 どう足搔いても彼の関心は下がっている。だからといって度を超えたはしゃぎぶり、あるいは自分の言動の影響を考慮しない無責任なやり方が認められる訳はない。終劇の近づくこのステージの幕引きは後味が良くないように思う。

 かつて他の政治家が不祥事を起こした際、小泉首相は政治家の身の処し方は、自分自身で決めるべきと発言されたが、周囲が反対をしているにもかかわらず、自分だけの考え方に固執し、だんだん苦言を言ってくれる人までいなくなってしまっている現状こそ、最も良くないパターンに陥っていることに気づいていないのでしょうか。こうした小泉氏対する諦めの気持ちを観客が持っていることに本人は気づいていない。それが関心が薄れてしまった原因であるのに。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。お気軽にコメント・トラックバックでご意見をお寄せ下さい。では次回のお越しお待ちしております。

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時事」カテゴリの記事

コメント

 真魚様
 たびたびのアクセスがありがとうございます。
>戦時中の中・韓の歴史観と日本の歴史観の食い違いこそが、大きな軋轢を産み出していると私は思っています。
 確かに認識の違いが現在の問題につながっています。すべての認識を一致させることは出来ませんが、一定の合意点を見いだすことは可能ではないかと思います。
 以前はよく相互の国の教科書問題が取り上げられていました。こうした議論を聞いていると教科書を褒めすぎた内容になっていると私は感じていました。いくら教科書に書いてあったとしても、私の受けた授業のケースでは授業時間が足りないため割愛した事も、あるいは認識が定まっていないとして扱わない事が現場では起きています。それに教科書の記述は時代によって、あるいは政権によって変化します。つまりその時代の政府にとって都合の良い内容で収まっているのです。それを非難し合うぐらいでは、なんと自分たちの政府の良いところばかりを見た議論になっているのだろうか、何も解決しないと思っていました。
 その点で共通の歴史問題の研究をしようとする動きがあること、さらには相互交流が深まっている事は今後に良い影響をもたらすと思います。
 こうした問題について大事になってくるのは認識と自分たちのスタンスです。拉致問題でここまでの成果、さらに国民の理解を得ているのは日本のスタンスが被害者の全員の帰国という具体的な内容で、ぶれないことにあると思います。歴史問題、外交で日本のスタンス、あるいは行動は定まっていません。ですから謝罪をしても十分な信頼を得るまでに至っていません。そしてスタンスが固まっていないから良いように利用され、非難されたことで国内で波紋が広がって世論がぐらつきます。
 謝罪よりもこれから対外的に示さなくてはならないのは、過去の事実について日本はどんな認識を持っているのか。そしてそこで得た教訓や反省点をどう活かしているかが問われてくるように思います。

投稿: Nipper | 2006年8月16日 (水曜日) 16:49

Nipper様、当方の無知な質問に丁寧にお答え頂き、とても恐縮です。有り難うございます。

>本当の意味でもう役目を終えた団体の解散は進んでいません。
道路公団や新東京国際空港公団も民営化され、住宅金融公庫(5年以内に廃止)、都市基盤整備公団(現在廃止)と、役目を終えた団体の解散は進んでいると思ったのですが。独立行政法人化されるというのは、中長期計画に基づき、収益を出さないと廃止される可能性もあり、健全な経営が進められているから全体として良いことだと思っていました。

ただ、財政緊縮、収益重視の傾向から、教育や医療の分野への締め付けが厳しくなり、特に教育の分野では地方により教育水準の格差がでないか懸念されている点においては、貴殿と同感です。

道路公団の民営化に関しては、猪瀬さんの改革は挫折したと捉えるべきなのですかね。このあたりの勉強が私は足りていませんので、時間ができれば本を読んで調べてみたいと思っています。

靖国神社の問題に関しては、さすがによくご覧になっていますね。東南アジアはどちらかというと、「軍事大国」中国と「(かつての?)経済大国」日本の仲が悪化することを懸念しているように私は捉えていました。やはり、A級戦犯の分祀が行われない限り、この問題は解決しないのですね。共産党のHPを見ると、境内の資料館では、日本の戦争を肯定的に展示されていると書かれてましたが、いつか実際にこの目で見てきたいと思っています。

戦時中の中・韓の歴史観と日本の歴史観の食い違いこそが、大きな軋轢を産み出していると私は思っています。どれが真実で、どれが間違っているのか、正直私には分かりません。ですので、中・韓・日三国合同での共通の歴史認識を作る作業を国を挙げてやってくれたらなあと思っています。

投稿: 真魚 | 2006年8月16日 (水曜日) 11:46

真魚様
 コメントありがとうございました。興味をもって読んで頂き、嬉しく思います。
 ご指摘の点への回答ですが、経済政策の面では、不良債権処理は確かに進んだと思います。国が期限を定めて民間に処理を促した訳であり、国が処理した訳ではありません。特殊法人改革で言えば、衣替えしただけで終わっています。本当の意味でもう役目を終えた団体の解散は進んでいません。むしろ独立行政法人化した事で、病院や大学といった地域にとって重要なインフラである部門は厳しい状況が続いています。地方に行けば行くほど、民間のサービスは限られてきますからナショナルミニマム(最低限の行政活動)が全国一律で受けることができるようにするには、必要だと私は思います。
 その他にも道路公団民営化は、そもそも民営化することで採算の合わない道路を造らないというのが大前提でした。高速道路は私はナショナルミニマムの枠を超えていると思います。ほぼどこの県庁所在地にも道路が整備されており、これ以上の整備には疑問を持ちます。
 しかし民間会社が建設しないルートについては、国と地方自治体で税金で建設することができます。これでは意味がありません。こうした矛盾点が多くあるのが小泉改革の実態ではないでしょうか。改革、改革と言葉で分かりやすく説明することは結構ですが、その言葉のイメージと実態がかけ離れているのが現状です。
 靖国神社への非難は中国・韓国からです。東南アジアはどちらかというと、靖国問題で日中間の関係が悪化することを懸念し、日本側に事態の解決を求める内容です。国家を代表する首相が参拝し、英霊に祈を行うことに誰も反対しているわけではありません。しかし戦犯が合祀されている限り戦争遂行者に頭を下げていると見られることは当然です。そうした人に頭を下げるのは多くの犠牲となった国民、靖国に祭られている6割以上と呼ばれる餓死によって死んだ兵士には納得できないと私は思います。ドイツに置き換えてみればヒットラーに頭を下げているのも同然になりますから。
 個人の心情と言いながら、政教分離の観点から神道形式の参拝をとらないのは自分が政治家というポジションにいることを自覚しているから。いくらポケットマネーで献花料を収めても政治家、首相として訪れたとしか言えないでしょう。その点での公人、私人としての認識も甘いように思います。行きたいのであれば観客(国民)を搔き立てる為ではなく、堂々と行けるように整備をしてから行くべきであると私は考えます。
 また気になることがありましたらコメントをください。次のおこしをお待ちしております。

投稿: Nipper | 2006年8月16日 (水曜日) 10:21

当blogへのトラックバックありがとうございました。

貴殿の記述文とても興味深く拝見致しました。小泉首相のスタイルが演劇タイプであること。まさにその通りだと思いました。

支持率が低下しそうになると日朝平壌宣言を結び、再び支持率が上昇したり、郵政民営化推進のために衆議院を解散し、結果、衆議院は自民党の大勝に終わったりと支持率低下を持ちこたえてきた結果が、長期政権を維持できた理由なのかもしれないですね。

ただ、国民にとって分かりやすい政治というのは、歓迎すべきではないかとも思います。国会審議活性化法によって始まった党首討論は、毎回白熱したものとなり、お茶の間にもTVを通じて流され、政治に関心を持つ人たちも増えたのではないでしょうか。国対政治や派閥間の駆け引き等国民の目の届かない所で行われる政治よりは良い気がします。(最も、ヒトラーのようにメディアを使った大衆操作が行われる様相であれば、気をつけないといけませんが)


>「道路公団民営化」「年金改革」「特殊法人改革」「郵政民営化」彼なりにこなしたつもりだろうが、結果は散々である。

私は、「道路公団民営化」「特殊法人改革」「郵政民営化」は完全ではないにしろ、一定の成果は上がっている思っていました。官僚によって、抜け道は作られてしまったかもしれませんが、道路特定財源の一般財源化の検討や、財政投融資を使って(高度経済成長も過ぎ去り、もはやその役割を終えようとしている)特殊法人が採算度外視で赤字を生み出していることに一定の歯止めをかけたのではないでしょうか。独立行政法人化もそうでしょうし、金融再生にしても、小泉さんが抜擢した竹中さんの活躍により、不良債権の処理が進んだのではないでしょうか。
私は経済の素人ですので、詳しい部分はわかりませんが、一連の改革はそんなに駄目駄目なものだったのですか?

それと、あともう一つ気になったのが、
>中国・韓国・東南アジアからの非難も当然あった。
靖国神社の首相参拝を非難しているのは、中国・韓国が中心とばかり思っていました。(強いて言えば台湾も非難している勢力もあると聞きましたが。)インドネシアなどは昨年大統領が靖国参拝を支持していましたし、東南アジアで靖国参拝を非難しているのは、国の公式見解ではなく、一部の華僑や中国系移民、その影響下によるものではないのですか?

投稿: 真魚 | 2006年8月16日 (水曜日) 02:08

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